CHANGE YOURSELF! | |
のらこみR EVO20・2005年新年号より | |
〜 5,4,3,2,1,THUNDERBIRDS are GO! 〜 | |
今、我が家の子供達の中でサンダーバードがちょっとしたブームになっている。 サンダーバードと言っても、JRの特急ではない。1960年代にテレビ放映された人形劇で、スーパーマシン「サンダーバード」を駆使して世界中の災害現場に急行し救助をする国際救助隊の物語で、私と同世代の方は、このヒーロー達とマシンの活躍に夢中になった方も多いはずだ。
そのサンダーバードがこの夏リメイクされ実写版の映画になって上映された。私も子供と一緒に見る気満々だったが、上映期間中は忙しくてとうとう見れずじまいになってしまった。 しかし子供達は(私も)どうしてもあきらめられないようなので、DVDが発売と同時に購入。
内容はなかなかどうして大人でも楽しめるもので、CGを駆使したマシンのリアルな動きもさることながら、国際救助隊の隊長で父親のジェフ・トレーシーと隊員である子供達の絆と成長、父と思春期の子の対立と葛藤みたいなものが描かれていて、笑いあり、感動ありの作品になっていた。
子供達はそんなことより当然サンダーバードのメカに夢中で、特に下の二人はそれぞれのお気に入りのマシン(長男は1号、次男は3号)を手に持って「サンダーバードGO!」と叫びながら走り回っている。10歳の長女はさすがに恥ずかしいらしくそんな遊びはしないがそれでもセリフを覚えるぐらい繰り返し見ている。 その劇中、まだ隊員になれない末っ子のアランが、自分が仲間に入れないことが何故なのか(大人になるために必要なこと)を自覚できず、父親に反抗するが、成長と共に、自分達の任務の重さと尊さを悟っていくシーンがNOLAの仕事と子供たちにダブった。 アラン(五男)がジェフ(父)に救助できなかった母と救出されなかったことを逆恨みするフットのことを「救えなかったなんてウソだろう?」と聞く場面で、父は息子に
「全員を救うことは不可能だ。力を尽くそうが勇気があろうがな・・・。
それがどんなに愛する人でも、自分の命より大切な人でも救えないことはある・・・。」
と話す。アランは厳しい現実の前に人知れず苦悩する父の姿を知る。
共同生活でも同じ、怪我や事故、死などのリスクも隣り合わせ。せっかく入寮しても様々な理由でNOLAを去る子もいる。また百万人のひきこもりに対してNOLAの定員はたったの10人。手抜きなんてありえない。我々はいつもBESTを尽くしている。 それでも救えないことはある。
そして父親に反抗していたアランが敵のフットと戦う場面で「僕はジェフ・トレーシーの息子だ」と言い立ち向かう。形勢逆転し最後には絶対絶命のフットをアランが助けるとき、「お前の命なんか助けたくないけど、これが僕らの使命だ」と言ったアランの成長に感動。 我が家でも思春期に足を踏み入れ始めた長女(小4)が最近、いつもそばにいる他人(寮生)が疎ましくてしようがないらしい。そしてそんな私達の仕事にも不満を口にするようになってきたと同時に埋められない寂しさも・・・。 この前も何度も続けて脱走した寮生がいて、本人は実にくだらない動機(寝坊して叱られる・・・とかタバコが自由に吸えない・・・とか)で出て行ってくれるのだが、冬のこの時期の脱走は道に迷えば凍死の可能性もあるだけに気が気でない。
何とか夜までに・・・と心当たりをスタッフ全員で入れ替わり立ち代わり探す。 その間は時間的にも精神的にも子供にかまってる余裕はない。 長女は事態を察して二人の弟の面倒を見て寝かしつけてくれる。 長女も自分の任務はわかっているが寂しい思いを消化しきれないこともある。 寮生の方は幸い近所の人が見つけてくれて無事に戻ったが、あとで長女は家内に「パパとママが寮生にとられる気がする」と言って泣いた。 そのときに私は言う、今、たくさんの事件が起こっている。 誰かがやらなければ、世の中はよくなってはいかないんだよ。 神様は「人(他人)をたすけて わが身助かる」とおっしゃってる。 でもその気持ちはちゃんと神様は受け取ってくれているよ・・・。 子供達にとってこの現実を、今は難しく受け入れがたいことかもしれない。 そして私達もサンダーバードのような派手なヒーローにはなれない。
だがいつか父や母の仕事を誇りに思ってくれる日が来ることを願ってやまない。
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佐藤 透 | |
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