ドキュメント NOLA除雪隊

NOLAがあるここ殿川地区で毎冬悩まされるのが凍結。紀伊山地の入り口に位置し、標高500mの山頂にある殿川は、標高の高さゆえに気温が低く0℃以下の日が一週間以上続くことも珍しくありません。そのため積雪自体はそう多くはありませんが、一旦積もるとなかなか雪が融けず、道路に積もった雪は固められ凍結してしまうのです。そして年に2〜3度は20〜30cmの雪が積もることもあります。

もちろん北国の人たちから見れば一笑に付される程度の積雪ですが、暖地に位置する奈良県ではもともと雪に対しての設備がないのでこの程度でも大きな障害になってしまいます。そしてNOLA(殿川)へのアクセス道となる全長2kmの町道・小名−殿川線の標高差は200mもあり急勾配と狭い道が続く難所で、毎年この季節には立ち往生する車が続出します。
また緊急車両が通行困難になるため非常時の対応が間に合わない自体も想定されます。

しかし、吉野町では過疎化する町村の例に漏れず予算が困窮し、凍結防止剤の散布はおろか設置すらままならない状態で、雪が降るたび6km先にある支所へ自分たちで凍結防止剤を取りに行かなければなりません。

しかしここ殿川地区でも高齢化、過疎化が進み20代以下の若者が住むのはNOLAと区長宅の2件しかなく、その他はすべて65歳以上の老人が暮らしています。そのうえ、運転免許を持つ方も少ないため、凍結防止剤を取りに行くことさえままならず、4WD車を持っていなかった我々が越してきた当初は、1週間近く雪に閉ざされることも少なくありませんでした。

 そこで最初は私ひとりで、後にNOLAに居る寮生たちの若い力も借りて、除雪に出かけることにしました。
最初は町道だけを除雪していましたが、ここ殿川に住む半数以上のお宅が一人暮らしの老人で、そんな彼らが玄関から道までの除雪も自分たちでやることは過酷で危険な仕事となっているのを見て、NOLAの寮生やスタッフが増えた今はお宅の玄関先までの除雪も寮生たちの手で行うようにしています。

 どうしてそんな人のいい事を・・・と聞かれることもありますが、寮生たちにとっては大変役に立つ体験なのです。
生まれてこのかた自己中心に思いのままに育った彼らには、自分が満たされない不平不満は言っても、自分が誰かの為につくすという体験がほとんどありません。

そのため自分が無力で役に立たず、果ては生きている意味さえをも見失い、自信をなくしてしまっているのです。
そんな彼らがこの過酷なボランティア活動に参加することで「こんな自分でも人の役に立つことが出来る。」

また近所の人たちに感謝の言葉をかけられる事で他人とのコミュニケーションをとることへの抵抗感や不信感が減ると同時に生きがいややりがいといった自信を取り戻し、再び社会参加をしようという気力が生まれます。

また辛いことに立ち向かい乗り越える、心の強さをも体得できる貴重な実習なのです。
ですから彼らの除雪活動に出遭ったときには是非暖かい声をかけてやってください。
彼の周囲の大人に必要なことは「かわいそうだから困難を排除する」事ではなく、「困難に立ち向かう姿を見守る」ことなのです。
そんな彼らの奮闘を写真と文章で公開しましたので見てやってください。   
                                             

 NOLA代表 佐藤 透
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