NPO法人 関西青少年自立支援センターNOLA


NOLAの活動

自然流自立塾「NOLA」は不登校、引きこもり、ニート、非行等、何らかの理由で自立が出来ない
青少年(以降、自立不全者と表現。)の「社会参加」を目標に、スタッフが彼らとの共同生活をしながら、野良仕事やスポーツを通じて生きる力を養い、彼らが「自主独立」できるその日まで、共に生きる場所として、1999年8月奈良県は吉野町の山里に設立。

設立の動機は、私自身が学生時代、自分自身が受験地獄に翻弄されたことから、不登校になり、静岡県の牧場で共同生活を体験し、社会復帰できたことが大きい。
その後いくつかの職種を経験したが、いつかは世の中に恩返しを・・・という想いや、自分の子供は田舎でのびのび育てたいという想いが強く、妻の出産を機に各地の田舎を見てまわり、縁あって1994年吉野町殿川という、標高500m軒数16軒の小さな集落の一角の老齢により離農した農家を購入し、子育ての傍ら準備を進めていった。

その敷地約1万坪に現在は、元からある母屋を中心に、現場ハウスを改造した男子寮、女子寮、宿泊研修棟に手作りのキャンプサイトや動物小屋が点在する。この他、2kmほど下った別の集落に、約4反の遊休農地を借りて田んぼや畑などを耕作している。

2006年10月現在、佐藤家家族5人にスタッフ2名と14歳〜23歳までの寮生8人の計15人、うち2名がアルバイトに、2名が学校に通っているほか、ヤギ3頭、犬3匹、鶏60羽、ウコッケイ12羽、合鴨7羽が共に暮らしている。

青少年の自立支援といえばカウンセリングやフリースペースなどが一般的で、一口に共同生活といってもあまりピンと来ないと方も多いと思う。

NOLAの生活
 NOLAの生活を一言でわかりやすく言えば、アイドルグループの「TOKIO」がTV番組で田舎暮らしをしている「DASH村」のような生活といえばイメージしていただけると思う。

 朝は7時起床し、散歩に出る。約1万坪の広大な敷地内を一周することから始まる。
昼夜逆転の生活で朝弱い彼らは、この散歩でさわやかな山の空気を吸い、身体を動かすことで、、血圧があがり、寝ぼけ眼の目と身体を目覚めさせる。
散歩から帰れば朝食。朝食を抜くことは、血糖値があがらず、昼間の活動に支障をきたすのは周知のとおりだが、この散歩で1周約1,2kmを15分ほどで帰った後は、おなかも減ってくるので朝食も美味しく食べられる。

その後、決められた分担に従い、各部屋の掃除や、飼っている動物の世話を行う。動物の体調を見るのも大事な仕事。自分のことでクヨクヨ悩んでいる暇はない。

続いて9:30〜作業。これが共同生活の大きな特徴ともなっていて、NOLAの名前の由来にもなっている野良仕事が中心。今の時期は稲刈りだが、開墾や家を建てたり、自分たちが生きて行く為に必要なことはスタッフと共に殆ど自分たちでやる。

ここではどんな立派な能書きを言っても朝、起きれなければ、作業をこなさなければ前には進まない。長年引きこもって現実を知らない寮生は、頭で描いていた理想と無力な自分自身のギャップを痛感する。そこには崇高な理想も建前や理屈も一切通用しない。最初は体力もなく何も出来ない彼らは苦痛以外の何者でもない。そんなときにすぐスタッフが寄り添い励ましたり、悩みを聞いたり、時に叱責することもある。24時間生活を共にするスタッフにも寮生にも言い訳をする逃げ場はない。スタッフも仕事を超えた熱意でぶつかり合って共に生きてゆく空間なのだ。

だが、人間には環境に適応してゆく能力が等しく備わっていて、苦痛はいつまでも続くことはない。そして自然の中で目いっぱい身体を動かすことで、昼夜逆転し、不眠や不安に苦しんでいた者も、草刈や稲刈りなどの野良仕事は、内容が単純な分、余計な事を考えずに作業に没頭できる。そして結果が目に見える形で現れるので、達成感や充実感が味わえる、また、昼間身体を動かすことは心地よい疲労ともに次第に眠れるようになり、鈍っていた身体も徐々に引き締まり体力がついていく。その結果は精神的安定にも寄与し、入寮時に服薬していた者も睡眠薬や安定剤などの服薬が不要になる(減少する)などの形で現れてくる。これらは来たるべく就学・就労に当たって大変重要な要素となる。

 また、作業と共に炊事や洗濯なども当番を決めて自分たちがやるので、一人で生きていく為の術を体得し、確実に自立へ向けた力がつく。
 野良仕事だけではない、NOLAの若い寮生たちは過疎化、高齢化したこの地域の貴重な戦力でもあるため、ボランティア活動(草刈や除雪、老人のお手伝い等)にも積極的に出かけて行く、田舎ならではの暖かい地域の人たちとの交流は、対人関係の抵抗感を減らす為の大きな力にもなっている。自尊感情が低い彼らにとって、皆から感謝され頼りにされ「自分も他人の役に立てる!」という経験することで、体力向上共に「自分もやれば出来るんだ!」という自信がついて来て、次第に「やりたいこと」が「出来ること」へ変わってゆく。そうすれば自然と外(社会)に目が向き始め、バイトや学校へ行きたいと言い出す。これらはすべて実践でしか身につかないことばかりだ。

 そして、いつもそばに居るスタッフが見ていよいよ力がついたと認めれば、学校やアルバイトへ出ることが許される。

 人は失敗を重ねることで成長していくものだが、現代社会は失敗すればすぐ責任!責任!と、許すことをしないことも彼らの社会参加を阻む大きな要因である。だが、田舎ならではののんびりとした人間関係は彼らの再出発を暖かく応援してくれる。実際、寮生の多少の失敗は、地域の人たちも「まあええがよ」と受け入れてくれる懐の広さがあることも大きい。そして日々の交流の中で我々の活動を理解して、「うちに来て働いてみるか?」と声をかけてくれ、寮生たちを就労実習に受け入れてくれている地域のおじさんたちや、我々に代わって説教!?してくれる口やかましいおばさんたちの存在は大変ありがたく欠かせない存在であり、NOLA単独で寮生の自立はありえない。まさに「子育ては地域で」を実践できるところが田舎であり、NOLAが田舎で共同生活という自立支援を行う最大の理由でもある。

 これらの結果はデータにも如実に現れており、中学生は入寮半年以内に100%登校開始。しかも欠席日数は3日以内(殆どが皆勤)で卒業している。また、20歳以上の成人のニート・引きこもりの寮生も入寮後1年以内に75%が就労(バイト・就労研修を含む)している。(いずれも中途退寮者、精神・発達・知的障害等があると認められる者を除く実績)
また、これらが火事場の馬鹿力的な短期間のものではなく、地道なリハビリ(共同生活)による彼らの実力向上と自信回復であることは、寮生のNOLA卒寮後の再発率が0%(中途退寮者は除く)を更新中であることからもお解かりいただけると思う。

彼らは
社会参加が出来ないのではなく、やり方がわからない(経験不足な)ため自信が持てず踏み出せないだけであり、他人に接し、適切な環境と支援さえ行えば、自ら動き出すことは可能なのだ。

 だがNOLAでは学校やバイトに行けてもまだ卒寮ではない。これからが本番で、いよいよ社会に出て継続することで、これが「火事場のバカ力」などではない本当の実力かどうかが試される。

具体的には、学生は学校卒業。成人は一年以上の勤続および一人暮らし一年以上が基準となる。一人暮らしは基本的にNOLAの近くでおこなう。いわゆるスープの冷めない距離を保ちながら、彼らの様子をスタッフや地域人たちの協力も得ながら見守っている。これは、もし彼らに何かあっても、孤立し、煮詰まってしまう前にすぐこちらがフォローできるようにという配慮からだ。

 年月が過ぎ、これらを自分の力で達成した者に、昔の面影はもうない。精悍で自信に満ち溢れているからだ。こうなればもう大丈夫。卒寮の許可が下りる。

彼らはもう何処へ行っても通用する立派な若者だ。

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