自立不全について


  資本主義社会の停滞と競争の激化に伴い社会や学校での自由な競争も、今日では足の引っ張り合いと化し、強者(大人)にとって都合の良い一方的な管理と言う枠をはめられ、その枠からはみ出る者や弱者は切り捨てられると言う現実の中では、皆がストレスをかかえて生きており、誰一人として心を病まないという保証はありません。

 それほど今の時代は、矛盾、葛藤、欲求不満に満ち満ちており、その中でも子供達は一番の犠牲となっているのです。

 その一方で、自由とわがままを履き違え、自分さえ今さえ良ければそれでよいなどという自己中心的な大人も子供も増えつづけ、それらの現状を裏付けるかのような凶悪な犯罪も後を絶ちません。

 そんな彼らは、社会に出ればモノや情報があふれ、過剰な競争にさらされる一方、親の過保護、過干渉によるぬくぬくとした何不自由ない家庭環境の中で、親子が癒着し人間が社会生活を営んで行くためのけじめやモラルといった基本的なルールを自由と自主性の誤った解釈により、教えられていない=わからないのが現状なのです。

大人から与えられるばかりで、自ら行動して人間同士の様々な交流体験が不足したまま成長したため、心がひ弱になり、本当に人間の心が成長するのに最も必要な、経験の蓄積がないために自分に自信が持てず、そのため親子とも失敗を極端に恐れ、受動的で困難に直面した際に自分の力で乗り越えることが出来ず、甘い家庭と厳しい実社会の現実のアンバランスのなかで彼らは次第に追い詰められ、いつしか不登校や非行、ニートはたまたひきこもりに陥ってしまってしまうのです。

これらの青少年の心根にあるものは皆共通しており、逆に詳しい分類がなされればなされるほど言葉に振り回される当事者を見るにつけ、これらの名前だけの分類や細分化は立ち直りには無意味であることは我々共同生活のでの実績から明らかです。

そのため NOLA では不登校やひきこもりなどという名前はあまり使わず、社会参加が出来ない青少年をすべてをひっくるめて、自立不全と言う言葉を用いています。

 残念ながらそんな彼らに対する公的機関の援助体制はまだまだ十分とはいえず、有効な対策が打てずにいるのが現状です。

また一部のフリースペースや相談機関では、待っていればそのうち良くなるかのような無責任な言動で、問題を先送りし、一部の学習塾やサポート校では学校へ行かなくても卒業資格を取れると言うような甘い誘いで、すべてが解決するかのような宣伝広告を展開していますが、実際には肝心の彼ら自身で問題解決し、自分の力で運命を切り開いていく能力が育たず、卒業すればそれで終わりで社会に放り出された結果、以前よりさらに状態が悪くなり、さらなる不登校の長期化や卒業後の引きこもり移行を招いています。

また不登校と言う名前に囚われてとにかく学校へ行けばそれでよい式に、ハードルを下げて学校へ行かせることだけに目がいく、また逆に「不登校は誰にでも起こり得る」という文部科学省の見解を鵜呑みにして、「学校に行かなくてもいいや」的に問題意識を持たず、心の自立をおろそかにしていると、後に必ず不登校や引きこもりの再発を招きます。

 最も必要なことは親子が距離を置き、安全な居場所で心のサポートを受けながら、様々な経験を積める環境で自立の練習をすることです。
 
 不登校、引きこもりの問題は、ただ待つだけでは、絶対に解決しません!
もし子供がガンに侵されていて、医者にすぐ手術が必要だといわれて、まだ元気だから・・・・とか、経済的負担が重い・・・などという理由でうちで放っておくでしょうか?

親が煮えきらず、「そのうち何とかなるだろう」などと甘い考えで問題を先送りしているとどんどん長期化泥沼化を招いてしまいます。

我々が自立支援活動で多くの青少年との関わりから社会(学校)復帰に要する時間はひきこもり(不登校)期間に比例すると言う事がわかっています。

また年齢が高くなるほど復帰に時間がかかります。
(過去のNOLA寮生の自立実績は小中学生の入寮半年後の学校復帰率は100%! 同、成人の半年後の社会参加(進学・就職・バイト)率は10%。同、1年後75%)

人間として最も華やかで楽しいはずの青春の一時期を無駄に過ごして失わないためにも問題解決は、早期発見、即時対応が肝心です!

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NPO法人 関西青少年自立支援センターNOLA 

理事長 佐藤 透
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